監督(かんとく)
監督と訳された語は、ギリシヤ語では「エピスコポス」です。今日の教会制度の一つに、監督―長老―執事という職階制度がありますが、紀元1世紀にはそれはまだ確立されていませんでした。ですから、今日の職階制度を「監督」という言葉の中に読み込む必要はありません。
(1)「エピスコポス」という語は、元来「見張人」を意味しました。
(2)パウロはエペソの長老たちを、その群の監督に任命しています(使徒20:28)。
(3)ペテロはイエスのことを、「監督者」と呼んでいます。「あなたがたは、羊のようにさまよっていましたが、今は、自分のたましいの牧者であり監督者である方のもとに帰ったのです」(Ⅰペテロ2:25)。
(4)パウロは、教会の職務として「エピスコペー」という語を使っています(Ⅰテモテ3:1)。これは、「監督としての職務」を指す語です。ただし、監督と長老の区別は必ずしも明瞭ではありません(テトス1:5〜7、Ⅰペテロ5:1〜2参照)。
(5)監督の務めは、神の教会を牧することでした。
以上のことから、紀元1世紀の「監督」とは、今日の牧師のような存在であったと考えられます。
ちなみに、監督―長老―執事という職階制度は、アンテオケの監督イグナティオス(2世紀にローマで殉教)によって確立されたと言われています。
出典:クレイ聖書解説コレクション「テモテへの手紙第一・第二、テトスへの手紙、ピレモンへの手紙」