テトス
使徒の働きには彼の名前が出てきませんので、その人物像と働きに関しては、パウロの四つの手紙(コリント、ガラテヤ、テモテ、テトス)から推察するしかありません。
(1)彼はギリシヤ人(ガラテヤ2:3)で、パウロによって信仰に導かれた人物です(テトス1:4)。
(2)彼は、パウロとバルナバに伴ってエルサレムを訪問しています。その時、彼に割礼を施そうという動きがありましたが、異邦人である彼が割礼を強制されることはありませんでした。この事実は、パウロにとっては、ユダヤ主義者を論駁(ろんばく)する強力な証拠となりました。テトスは、「信仰義認」を体現した生き証人となったのです(ガラテヤ2:16、5:6参照)。
(3)パウロは、問題のあったコリント教会に手紙を書き、それをテトスに託したことがありました。その結果、パウロとコリント教会の緊張関係は解消されました(コリント7:6〜7)。
(4)彼は、エルサレム教会への献金を集めるために労した中心人物のひとりです。
(5)彼は、パウロが開拓したクレテの教会を指導する任務をパウロから受けました(テトス1:5〜11)。
(6)パウロの死の直前、彼はダルマテヤ(皇帝直轄領のイルリコ州)に行き、そこで伝道しています(テモテ4:10、ローマ15:19参照)。
(7)伝承によれば、彼はクレテ島のゴルティナで監督となり、94歳で召されたと言われています。