サタンのことをよく「ルシファー」と言います。「ルシファー」とは、どういう意味ですか。
お答えします。
(1)Lucifer はもともと、ラテン語で「光を帯びたもの」(lux 光 + -fer 帯びている、生ずる)を意味し、キリスト教以前から「明けの明星」を指す言葉として用いられていました。しかし、ヘブライ語の旧約聖書にも、ギリシア語の新約聖書にも、この言葉は使われていません。
(2)キリスト教において、この言葉をサタンと結びつけたのは、オリゲネスが最初であると考えられています(ただし彼の著作はギリシア語なので、恐らくそのラテン語訳がサタンとしてのルシファーの初出だと思われます)。
(3)紀元4世紀、ヒエロニムスは、聖書のラテン語訳(ヴルガータ訳)において、ヘブライ語の「明けの明星」を意味する言葉「הֵילֵל」(イザヤ書 14:12)をLucifer と訳しました(古ラテン語訳を踏襲して?)。なお、この箇所の「明けの明星」は、本来、バビロンの王を指すものですが、バビロンの王の背後で働くサタンをも暗示しています。
(4)西欧文学において、ルシファーが登場する名高い文学作品としては、ダンテの『神曲』とジョン・ミルトンの『失楽園』が挙げられます。特に後者は、神に叛逆するルシファーを中心に据えて歌い上げたため、その後のルシファーにまつわる逸話に多大な影響を与えることになります。
(答えた人:牧師 中川健一)
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