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今日の聖書の言葉

天使は人間の女と結婚するのでしょうか?

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読者の皆様から、質問を受けることが多くなってきました。最近多かった質問は、創世記6章2節に関するものです。

神の子らは、人の娘たちが、いかにも美しいのを見て、その中から好きな者を選んで、自分たちの妻とした」とありますが、この意味について教えて欲しいという質問です。そこで今月は、この難題に取り組もうと思います。

創世記6:1〜4の文脈

文脈を確認するために、創世記6:1〜4を読んでみましょう。

 「さて、人が地上にふえ始め、彼らに娘たちが生まれたとき、神の子らは、人の娘たちが、いかにも美しいのを見て、その中から好きな者を選んで、自分たちの妻とした。そこで、【主】は、『わたしの霊は、永久には人のうちにとどまらないであろう。それは人が肉にすぎないからだ。それで人の齢は、百二十年にしよう』と仰せられた。神の子らが、人の娘たちのところに入り、彼らに子どもができたころ、またその後にも、ネフィリムが地上にいた。これらは、昔の勇士であり、名のある者たちであった」

この箇所は、旧約聖書の中でも、最も意見の分かれる箇所のひとつです。大別すると、2つの解釈があります。

(1)「神の子ら」とは、セツの家系に属する者(信仰者)たち、「人の娘たち」とは、カインの家系に属する者(不信仰者)たちである。その両者が結婚するようになり、罪の影響がさらに地上に拡大した。

この見解は、福音派の中では広く支持されているものです。かつては筆者も、この立場を取っていたことがあります。

(2)「神の子ら」とは、堕落した天使たちである。堕天使たちが人間の娘たちと結婚し、「ネフィリム」と呼ばれる超人が地上に出現するようになった。

この見解は、筆者の今の立場です。

 

どちらの意見を採用するにしても、この箇所がそれに続く洪水物語への前書きになっていることを、押さえておきましょう。つまり、洪水による地球規模の裁きが必要になるほど、地上には深刻な罪の状態が訪れたということです。

【主】は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾くのをご覧になった(創世記6:5)

とある通りです。

 

「堕天使と人間の女の結婚」説を支持する理由

筆者は、釈義的には(2)の立場を支持する証拠の方が多いと考えています。以下にその証拠を列挙します。

①「神の子ら」はヘブル語で「ブネイ・エロヒム」です。この言葉は、旧約聖書では例外なしに「天使」(良い天使も堕天使も含む)を指しています(新約聖書になると、「神の子ら」は天使以外のものも指すようになります。信者も「神の子ら」です。その場合の強調点は、「神によって創造された」ということです)。もし、創世記6:2の「神の子ら」だけは例外であり、セツの子孫たちを指すと主張するなら、その見解を支持する確固たる理由がなければなりません。

②この結婚が、人間同士の結婚(信者と不信者)であるとするなら、不思議なことが起こっていると言えます。この結婚は、男性は全員信者(神の子ら)で、女性は全員不信者(人の娘たち)という一方通行の結婚です。なぜ、信者の女性と不信者の男性の結婚がないのでしょうか。さらに言うなら、地上に広がった人類(アダムの子孫たち)は、セツとカインの子孫だけではないということです。創5章は、アダムにはこの2人以外にも息子や娘たちがいたことを示しています。従って、全人類をセツの子孫とカインの子孫に2分することには無理があります。

③初期の頃からユダヤ人たちは、「神の子ら」という言葉を「天使」と解釈してきました(ヨブ記1:6、2:1、38:7参照)。釈義的にも、文脈上も、そのように解釈することが正しいのです。この結婚を、人間同士の結婚と解釈し始めたのは、異邦人クリスチャンです。紀元4世紀のアウグスチヌスとクリュソストモスから、この解釈の伝統が始まりました。

悪霊と人間の娘の結婚だという説に反論する人たちは、マタイの福音書22:30をその証拠に挙げます。「復活の時には、人はめとることも、とつぐこともなく、天の御使いたちのようです」。そして、天使は結婚しないと主張します。しかし、ここで教えられているのは、「天の御使いたち」(良い天使たち)のことであり、堕天使たちのことではありません。さらに、人間も地上にいる間は結婚しますが、復活の時には結婚しなくなるというのですから、地上にいる堕天使が人間の女と結婚するのは、あり得ないことではありません。天使は、目に見える形で現れる時は、必ず男性の姿を取っています。また、天使の活動を描写する際、文法的には、常に男性形が使われています(中性形があるギリシア語の場合でも、天使には男性形が使用されています)。天使同志が結婚し、天使を生むことはありません。しかし、堕天使が地上において人間の男性の形を取り、人間の女と結婚して、子を産ませる可能性はあります。その結果誕生するのは、普通の人間ではなく、「超人」(人間を超えた人間、異常な人間)です。それが「ネフィリム」と呼ばれる存在です。

⑤堕天使たちは、ノアの洪水の直前の時代に、自らの天使としての領域をはみ出して、神からは許されていない越権行為を行うようになりました。ユダの手紙の6節にはこうあります。

「また、主は、自分の領域を守らず、自分のおるべき所を捨てた御使いたちを、大いなる日のさばきのために、永遠の束縛をもって、暗やみの下に閉じ込められました」

さらに、ペテロの手紙 第二 2:4〜5にはこうあります。

「神は、罪を犯した御使いたちを、容赦せず、地獄に引き渡し、さばきの時まで暗やみの穴の中に閉じ込めてしまわれました。また、昔の世界を赦さず、義を宣べ伝えたノアたち八人の者を保護し、不敬虔な世界に洪水を起こされました」

この2箇所の聖句は、人間の女と結婚した堕天使たちへの言及だと思われます。

⑥では堕天使たちはなぜ、人間の女に情欲を抱き、彼女たちと結婚し、「超人」(ネフィリム)を誕生させるようになったのでしょうか。そのヒントは、創世記3:15にあります。

「わたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく」

この聖句は、メシアが「女の子孫」として誕生することを預言しています。それを知っていたサタンは、堕天使と人間の女との結婚を推進し、女から生まれる者を「破壊」しようとしたのです。これは、メシアの誕生を阻止しようとするサタンの策略です。

確かに、堕天使と人間の女の結婚は、今の私たちの感覚からすると、到底あり得ないことのように思えます。しかし、そのあり得ないことが実際に起こったのだと考える時、なぜ、あれほど厳しい大洪水による裁きが必要であったのか、初めて理解できるようになります。

ここでも、聖書をヘブル的に、また字義通りに解釈することの重要性を教えられます。

(答えた人:牧師 中川健一)