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「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる」と書いてある。

紀元26年頃のイスラエル

イエス・キリスト

さて、イエスは、悪魔の試みを受けるため、御霊に導かれて荒野に上って行かれた。そして、四十日四十夜断食したあとで、空腹を覚えられた。すると、試みる者が近づいて来て言った。「あなたが神の子なら、この石がパンになるように、命じなさい。」イエスは答えて言われた。「『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる』と書いてある。」(マタイ4:1〜4)

1 荒野へ

この荒野での誘惑は、イエスが洗礼を受け、宣教活動を始める前に起こった出来事です。それは、悪魔の誘惑に打ち勝ち、メシア(救い主)として認証されるためでした。
イエスは、御霊(神の霊)に導かれて荒野に行き、そこで40日40夜の断食後に空腹を覚えました。
ところで、聖書には4という数字にまつわる出来事が記されています。ノアの時代の40日40夜の大洪水、イスラエル民族のエジプトでの奴隷期間は400年、エジプト脱出後の荒野での生活は40年等。このように並べ眺めてみると、4という数字は、次のステージに移るための聖めと訓練の期間に関係しており、その期間の終わりには、次のステージへの扉が開かれています。ヘブライ語で、4番目の文字「Dalet」は数字に置き換えると4です。この「Dalet」に「Door」という意味があるのは興味深いことです。

2 誘惑者サタン

サタン(悪魔)とは、神に敵対する者です。彼の戦略は、人を神から引き離し、自分の支配下に置くことであり、誘惑、不安、恐れ、疑いなどが彼の戦術です。
サタンは機を見るに敏(びん)、戦いに長けており、常に人の弱点をついてきます。彼は、イエスが断食を終えて空腹を覚えられたその瞬間、近づいてきてこう言ってきたのです。

「あなたが神の子なら、この石がパンになるように、命じなさい。」(マタイ4:3)

サタンはイエスを神の子と認めていましたが、逆にそこを突いてきたのです。神の子の権威をもって、石をパンになるように命令したらどうかと誘惑してきたのです。実に油断ならない存在です。私たちも、自分の立場、与えられた能力を用いる際には、十分に気をつけなければならないことを教えられます。

3 エデンの園と荒野でのサタンの誘惑

荒野でのサタンの誘惑の目的は、あのアダムとエバのように、イエスをも自分のことばに従わせ、神から引き離すところにありました。しかし、イエスは間髪入れずこう答えました。

「『人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる』と書いてある。」(このみことばは、申命記8章3節の引用です)

イエスがそのように答えたのは、メシアとしての使命に忠実であったからです。
イエスはご自分の使命について、次のように語っています。

わたしを遣わした方のみこころを行い、そのみわざを成し遂げることが、わたしの食物です。(ヨハネ4:34)

わたしが天から下って来たのは、自分のこころを行うためではなく、わたしを遣わした方のみこころを行うためです。(ヨハネ6:38)

ところで、「書いてある」と記されている個所に注目してみましょう。私たちには、アダムや昔の聖徒たちのようなコミュケーション能力はありませんが、神のことばが記された聖書があります。実は、神を信じるとは、みことば、教えを信じることであり、それによって、神のご性質、権威、力、みこころを知ることができるのです。

昔書かれたものは、すべて私たちを教えるために書かれたのです。それは、聖書の与える忍耐と励ましによって、希望を持たせるためなのです。(ローマ15:4)

「神の口から出る一つ一つのことばによる」と言われていることが、よく理解できます。

4 みことばはいのち

人を構成しているのは、「肉体、魂、霊」(1テサロニケ5:23)であることを前提に、次のみことばを読むとその意味が理解できます。
「人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる」とは、肉体は、パン(食べ物)で生きるのですが、魂は、神のことばすなわち聖書に記された神の口から出た一つ一つのことばによって生きるということです。それは、単に安らかな人生を送ることができるだけでなく、永遠に生きることをも意味しています。「生きる」は、「ゼーセスタイ」(ギリシャ語)を訳したものです。それには、「死を突き破って永遠に生きる、さらに、神のいのちで生きる」という意味まで含まれているのです。ここに、人生最大の問題である「死」についての解決と永遠のいのちの希望があります。
あなたも神のことばを受け入れて、死に勝利し、いのちに満ちあふれた人生を歩んでみませんか。

いま私は、あなたがたを神とその恵みのみことばとにゆだねます。みことばは、あなたがたを育成し、すべての聖なるものとされた人々の中にあって御国を継がせることができるのです。(使徒20:32)

下地 博之

この記事の執筆者

沖縄グレイスチャーチ牧師

下地 博之

1952年生まれ。沖縄県出身。
1978年 千葉工業大学・工業経営学科卒業。
1981年 受洗
カルト教会の副牧師であったが、ハーベスト・タイム中川健一牧師のヘブル的な聖書の学びにより間違いが分かり脱会。
2003年8月 沖縄グレイスチャーチ開設
2007年3月 沖縄聖書神学校卒業
2007年4月 按手礼を授かる
沖縄聖書神学校講師
聖書フォーラム・協力教会
2014年10月現在、ハーベスト聖書塾神学コース受講中