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今日の聖書の言葉

レシピ15 「ライト・ナウ」の法則

テレビ番組の取材で、多重債務者への援助活動を展開しているN牧師を訪問し、話を聞くことができました。また、自己破産からの再起を果たした方たちにも会うことができました。
多重債務に陥るパターンにはいろいろなものがあるようですが、私がインタビューしたのは、実に真面目で努力家の方たちでした。ある時から実力以上の投資をするようになり、結果的に高利の金を借りるようになった。それが積もり積もって、身動きができなくなった、という話でした。Hさんという方は、飛び込み自殺をするつもりで地下鉄のホームに立ったが、別の人が先に飛び込んだため死ぬことを思いとどまったとのことでした。なんとも劇的な話です。
多重債務に陥った人のほとんどが、自分の窮状を誰にも相談しないそうです(相談できないということなのでしょう)。そのため、自分一人で重荷を抱え、その負荷が毎日増してくるという苦しさを味わうことになるようです。その苦悩は、体験した人でなければ分からないものなのでしょう。

援助活動をしているN牧師は、次の4点を「悩みから脱出するためのポイント」として掲げてくれました。
(1) 一人で悩まない。
(2) 現状認識をしてみよう。
(3) 必ず解決の道はある。
(4) 人生の再スタートの絶好のチャンスだと考える。

「ライト・ナウ」の精神

私は20代後半の4年間、日本マクドナルドの本社に勤務していました。その経験を通して、実に多くのことを学びましたが、その中の一つが「ライト・ナウ」の精神です。
「ライト・ナウ」とは英語の「right now」のこと、つまり、「今すぐに」という意味です。「間違いに気付いたなら、弁解するより今すぐ正せ」、「気になっていることがあるなら、今すぐそれを実行せよ」ということです。とかく私たちは、「○○を終えてから、これをするつもりでいた」などと言い訳をしたがるものです。「ライト・ナウ」の精神とは、「弁解はいいから、すぐに行動に移せ」ということです。この精神は、それ以降の私の人生に大いに役立ちました。

多重債務者が抱え込む毎月の利息は、とてつもなく高いものです。最初は少し頑張ればなんとかなる額であっても、高利のために借金は雪だるま式に増え、最後は返済不能の額に達します。早く手を打たなかったために、結果的に自己破産に追い込まれてしまうのです。
問題解決を先延ばしにしたために、重荷を背負い込むというのは、金銭の領域だけの問題ではありません。仕事の面でも精神的な面でも、同じことが言えます。為すべきことを先延ばしにしていると、仕事量は増加し、精神的な疲労感は蓄積してきます。しかも、先延ばしにすればするほど、事態は悪化するのです。

朝早いスタート

「ライト・ナウ」の精神を実行しようと思うなら、朝早いスタートを切ることです。
一日の仕事量をイメージし、昼食前にその日の仕事量の6割〜7割を仕上げることを目標に動くのです。午後は仕事の効率が落ちますが、その日の仕事量の4割弱をこなせばいいわけですから、精神的な余裕が出てきます。夜の時間は、「おまけ」の時間、「趣味」の時間です。自分の好きなことのために時間を費やすことで、ストレス解消につながります。もちろん毎日こんなに順調に行くわけではないでしょうが、これを基本に活動していると、余裕が出てきます。
朝早いスタートを切ると、仕事に集中することができるようになります。仕事に集中するとは、時間内にこなせる仕事の質を高めることです。集中している時は、自分でも驚くほどの仕事量をこなすことができるようになります。

守りの姿勢から、攻めの姿勢へ

バイブルは、怠惰な者の生活を次のように描写しています。

「なまけ者は言う。『獅子が外にいる。私はちまたで殺される』と」

これもまた絵画的な表現です。獅子など外にいるわけはないのですが、なまけ者はとてつもない理由を考えて、動こうとはしないのです。「ちまたで殺される」とは大げさな言い分です。
「ライト・ナウ」の原則で動いていないと、私たちもまた怠惰な生活に陥ることになります。しかし、「ライト・ナウ」の精神を実行していると、仕事への取り組み方が守りの姿勢から攻めの姿勢に変化してきます。守っている時は疲れますが、攻めの姿勢に転じると仕事が楽しくなります。野球でも「負けた試合は疲れが残る」といいます。それと同じことが、日常の仕事でも起こります。攻めの姿勢がある時は疲れないが、守りに入ると疲れるということです。

書類の処理も、決断を先延ばしにしていると、机の上に未決の資料が山のように溜まることになります。「ライト・ナウ」の精神は、文書を読んだらすぐに決断し、相手に応答することです。中には即決が難しい内容のものもあるでしょう。その場合は、「後で判断する」という決断を下すのです。これもまた決断の一つです。漫然と書類に目を通しているのとはわけが違います。出張の多い人は、「出張の時に車中で読む文書ファイル」を作ればいいでしょう。今読む必要のないものは、そのファイルに入れておけば、移動中の時間を有効に活用できます。
即決ができない人は、時間を置いて、同じ書類を何度も何度も読み返すことになります。なんという時間の無駄でしょうか。しかも、ストレスが溜まった中で決断をすることになります。考えただけでも苦しいことです。

人間関係のもつれを解くためには、「ライト・ナウ」は極めて重要な原則です。顧客のクレーム処理をしている人にも、この原則は大いに役立ちます。不愉快になっている相手に連絡を入れるのは辛いことですが、「すぐに返事が来た」という事実は、相手に対して積極的なメッセージを送っていることになります。最初は憤慨している人でも、こちらの誠意を見て心を和らげてくれるはずです。これは「ライト・ナウ」精神の副産物です。

心の充電

誰にでも心の重荷がありますが、それもまた「ライト・ナウ」の精神で取り除く必要があります。
私たちの心には、不思議に良心というものがあります。その良心が、青から黄に変化する場合があります。時には、赤が点滅することもあるでしょう。「ライト・ナウ」の精神で生きていない人は、良心の痛みに気付きながら、それを放置したままにするのです。借金の場合と同じように、それは積み重なり、処置不能となり、その人の人格を歪めたり、破壊したりするようになります。本来の愛すべき人格が後退し、悪臭を放っているような表情や振る舞いをするようになります。
そういう状態から抜け出すためには、日々心の充電が必要です。私たちの職場では、幸いなことに毎朝聖書を読み、祈ってから業務を開始しています。これは心の洗濯であり、心の充電です。もし気になっていることがあるなら、それを告白してただちに「赦し」を受け取ります。これこそ、心の領域における「ライト・ナウ」です。

金銭的な領域、仕事の領域、心の領域、これらすべてにおいて「ライト・ナウ」の精神を生かすことは、非常に大切なことです。それができている人は、まさに人生の達人と言えるでしょう。

この章のポイント

1. 朝早いスタートを切れ。
2. 仕事においては、守りの姿勢ではなく、攻めの姿勢を取れ。
3. 日々、心の充電を心がけよ。