割礼(かつれい)とは、男性器の表皮をナイフで切り取る儀式で、アブラハム契約のしるしとして神様が与えたものです。女性の場合は割礼ができないので、旧約時代の女性と神様との契約関係はどうなっていたのですか?というご質問です。
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Q. 質問
Q:クリスチャンの女性です。割礼について教えてください。割礼には、象徴としての意味以外に、実質的な意義もあるのでしょうか。また、「割礼を施すことによる契約」という設定がなされてしまえば、神と男性との直接の契約という関係性のみが作られて、神と女性との直接の契約関係が成り立たなくなるのではないでしょうか。新約時代の信者には、割礼が必要ないということは理解しています。
A. 回答
A:割礼とは、男性器の表皮をナイフで切り取る儀式のことです。割礼に関して、いつものように3つ申し上げます。
1番目に、割礼には2つの目的があります。
一つは衛生的な目的、もう一つは宗教的目的です。割礼の習慣は、北アフリカ、中東、アジアなどの諸地域に、今でも残っています。それぞれの文化において、割礼の目的は異なります。ユダヤ人の場合は、主要な目的は、宗教的なものです。ユダヤ人にとっては、割礼は、ユダヤ性の証拠です。今でも、男子は生まれて8日目に割礼を受けます。
2番目に、割礼は、アブラハム契約のしるしです。
神がアブラハムと結んだ契約を、アブラハム契約と言います。聖書には8つの契約が出て来ますが、その中には「しるし」を伴った契約がいくつかあります。たとえば、ノア契約のしるしは、虹です。それと同じ意味で、アブラハム契約のしるしは、割礼です。質問者の方の問題設定には、ある誤解があります。それは、「割礼を施すことによる契約」という理解です。割礼を施すことで契約を締結するわけではありません。むしろその逆で、先ず、神とアブラハムの間に契約が締結され、次に、それを確認するために割礼が命じられたのです。割礼の儀式によって血が流されるのは、アブラハム契約が血の契約であることを象徴しています。
アブラハム契約は、アブラハムの子孫たちに引き継がれて行きます。それゆえ、アブラハムの子孫であるユダヤ人たちは、代々に渡って割礼を受けるのです。
3番目に、聖書は、女性に対して割礼を命じていません。
アブラハムの子孫たちが、アブラハム契約の当事者であることは、男性たちが割礼を受けていることで表現されています。イスラエルの共同体に所属している女性は、自ら割礼を受けなくても、共同体の一員であるというだけで契約の当事者になっています。女性に対する割礼は、深刻な被害をもたらします。それは、女性に対する人権侵害であり、今では世界的に問題になっています。聖書が女性に対して割礼を命じていないのは、神の愛の配慮だと考えることができます。
参考になる聖句
「割礼を受けているか受けていないかは、大事なことではありません。大事なのは新しい創造です」(ガラテヤ6:15)
割礼は、アブラハム契約の「しるし」です。
もっと詳しく知りたい方は
▲神がアブラハム契約の印として割礼を与えた場面の解説です。
▲モーセの妻は割礼を嫌い、息子が無割礼のままだったために、モーセが死にそうになる場面。神の契約の重さがわかります。
ローマ人への手紙(52)―教会内の調和を求めて(2)― (ロマ14:5〜12)
▲キリストの十字架以降、異邦人も多く集った教会において「割礼は必須か否か」が論争になっていた時のパウロの答えです。少し難しいので、上級者向けです。