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あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。

紀元前21世紀頃のメソポタミア地方

主はアブラムに仰せられた。「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者わたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」アブラムは主がお告げになったとおりに出かけた。ロトも彼といっしょに出かけた。アブラムがハランを出たときは、75歳であった。(創世記12:1~4)

これは、「アブラハム*の召命」と呼ばれる箇所です。このように神の声を聞いてそれに即座に応答し、父の家を出ていく人はすごいと感心したり、自分にはこんなことはないと距離を感じたりします。しかし、創世記の前後の記事を読むと、事情は少し違うようです。

*アブラムとはアブラハムの最初の名前です。

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Urアブラムが神の声を聞いて出発した町の名は「ハラン」となっていますが、アブラムの生まれ故郷は、ハランではなく、ウルというところです。ノアの洪水のあと、全地に広がった人類は、天地万物の創造主なる神をないがしろにし、太陽や月、動物そのものや動物と人を組み合わせたような偶像などを拝むようになりました。その中で月神礼拝の中心地のひとつがメソポタミアのウル、今のイラクの地域にあって、ユーフラテス川の下流、バビロンの南東約240キロの所です。アブラムはそのウルで生まれ、育ちました。

ですから、アブラムが最初に神の声を聞いたのはウルに住んでいたときです。このことは創世記には記録されていませんが、使徒の働き7:2〜3に書かれています。アブラムが神のことばに応答してウルを出発したときには、父のテラもいっしょでした。アブラムは父と共にウルから西に向かい、約束の地を目指しましたが、途中の町のハランでとどまります。ハラン、またはカランとも表記されますが、この町は、当時のメソポタミアとエジプトを結ぶ大通商路の近くにあった町です。東から出発すると、メソポタミヤ地方のバビロンからニネベ、そこからシリア地方に入ってダマスコ、そして地中海の沿岸に着いてツロ、そこから海岸沿いに南下してエジプトへ、となります。これが有名な「海沿いの道(ヴィア マリス)」です。

ウルからバビロン、ニネベを通過し、ニネベから北西に385キロ進んできた所が、ハランです。しかし、ダマスコまでには、まだ南南西に450キロの距離があります。ハランも月神礼拝の盛んな所だったと言われています。テラはそこに住みつきました。ここでアブラムは「神の時を待つ」ということを学びます。父テラが205歳で死に、アブラムが75歳のとき、再び神の声が与えられました。ハランからの旅立ち、これはアブラムにとって再出発だったのです。

清水 誠一

この記事の執筆者

清水 誠一

熊本聖書フォーラム代表

清水 誠一

1955年生まれ。静岡県出身。
1981年熊本大院卒。
税理士事務所、日本IBMに勤務ののち、1995年より熊本市に在住、現職は会社役員。
20代で右翼思想から転向して、米国バプテスト教会宣教師より受洗。
30代でペンテコステ系神学に傾倒するも挫折、ガン病棟を経験。
40代は仕事に没頭、家庭崩壊と離婚の危機。
50代で聖書を読み直す。
2013年より熊本聖書フォーラム開始、現在に至る。
2014年7月ハーベスト聖書塾卒。