今日の聖書の言葉

レシピ20 「黄金律」の法則

黄金律の定義

すでに述べたように、バイブルにはイエス・キリストとパリサイ人たちとの論争が頻繁に出てきます。争点は、「モーセの律法」をいかに解釈するかという点にありました。ある時、イエスを試すために一人の律法の専門家がこう質問します。
「先生。律法の中で、大切な戒めはどれですか」
パリサイ人たちは、バイブルの中には613の戒めがあると教えていました。その質問にどう答えるかによって、イエスの律法理解の程度が分かります。場合によっては、激しい論争に発展する場面でした。
その時、イエスはバイブルの教えを二つの戒めに要約し、敵の口を封じました。

「心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ」

これが第一の戒めです。これは、ユダヤ人たちが「シェマ(聞け)」と呼んで、日々朗詠する有名な箇所です。

「あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ」

これが第二の戒めです。

確かに、バイブルにどのような戒めが書かれてあるにせよ、それは神への愛と隣人への愛を実践するなら、守られたことになります。一見複雑で難解に見えるバイブルも、この二種類の愛をゴールとして読む時、全体像が見え始めます。
通常、「黄金律」とは、相手にとっての最善を行なうことを意味しています。つまり、「自分にして欲しいことを、相手にもする」ということです。この法則こそ、あらゆる局面で可能性の扉を開く鍵です。

黄金律とビジネス

人間関係には、「相手に与えた通りに自分に返ってくる」という原則があります。
笑顔で応対すれば笑顔が返ってきますし、不快な表情を見せれば相手も不快な表情を送ってきます。この原則は、ビジネスの世界でもそのまま通用します。

「自分にして欲しいことを、相手にもする」というのが、ビジネス成功の最大の秘訣です。
最近は、多額の費用をかけて、顧客満足度を調査する企業が増えてきました。その理由は、顧客のニーズ(必要)を分析し、自分たちの会社を「黄金律」を実践する企業にするためです。実際のところ、黄金律を無視した営業活動など、考えられない時代になっています。

セールスにおける黄金律は、次の3つのキーワードに集約されるでしょう。
1. 公正。つまり、嘘を言わない、騙さない、言い逃れをしない、ということです。この姿勢は、顧客の信頼を勝ち取ります。
2. 品質。常によい品質の商品を提供することが、評価につながります。
3. 顧客中心。今の時代、セールスマンよりも顧客の方が多くの情報を持っていることがたびたびあります。従って、セールスマンは、自分の意見を押し付けるのではなく、相手の考えを聞き出し、それに対して助言する立場に立つのがよいのです。

黄金律と人生

ここで、米国で起こったある実話を紹介します。
オハイオ州に住んでいたチャールズ・ムーアという人は、2006年初頭に失業し、故郷のデトロイトに戻りました。しかし、そこでも就職先が見つからず、ついにホームレスとなりました。
7月になって、彼はゴミ箱の中から政府発行の貯蓄債券31枚を発見します。ところが驚いたことに、彼は所有者を探し当て、それを返却したのです。この貯蓄債券は、1980年代に故アーネスト・レートという人物が8900ドルで買ったもので、時価でおよそ21000ドル(約250万円)になっていました。
彼はその債券を、アーネストの息子のニールに返却しました。その時にニールが出した礼金は、わずか100ドルでした。
そのニュースが地方紙に掲載されるや否や、電話やEメールでの抗議が、ニールの元に送られてきました。地域の住民たちが、100ドルとは何ごとか、感謝が足りないと怒りの声をぶつけてきたのです。弁護士であるニールは、82歳の母親にその責任をなすりつけ、こう言い逃れをしました。「母親が相続人なのだ。あの年齢の人たちは、100ドルでも十分なお礼の額だと考えるのだ」

今度は、地域住民たちが行動を起こし始めました。ある人は、空き瓶が詰まったゴミ袋8枚と、コインが詰まった半円状の器を送ってきました(空き瓶は返却すれば補償金が返ってくる)。
ビリヤード店の主人であるジェッシー・ニコンは、ムーアを自分の店に招待し、食事を提供しました。
それ以降も、ムーアの正直な行いに感謝する人々の数は増えていきました。
ミシガン州に住む二人のビジネスマンは、1200ドルを送り、さらに、ムーアが買った洋服の代金250ドルの支払いもしました。一番よかったのは、この二人の仲介で、清掃会社に就職する道が開かれたことです。「この人は、自分のことで精一杯の時に、他人のことを考えて行動することができた。素晴らしいことだ。私たちもこの行為を見習うべきではないか」と、彼らは語っています。
ムーアが債券を返却して以降の話の展開を見ていると、人生の面白さを感じます。世の中も捨てたものではないという思いになります。

成功の定義

次に紹介するのは、『サクセス(成功)』誌が2006年に米国で行なった調査結果です。それを見ると、アメリカ人が「成功」をどのように定義しているか、よく分かります。予想以上に健全な回答が集まっているので、驚く方も多いと思います。たとえば、「ビジネスでの成功とは」という質問に対して、60%の人が、「他の人の生活により多くの価値を付加すること」と答えています。「大金を儲けること」と答えたのは、たったの18.8%でした。日本で同じ調査をすると、どういう結果が出るのでしょうか。

「成功の中に含まれている最も重要な要素とは何か」
 信仰 ― 41%
 家族 ― 25.5%
 バランスの取れた生活 ― 11.7%
 幸福 ― 7.3%

「成功するために必要な要因とは何か」
 家族とのよい関係 ― 89.9%
 配偶者とのよい関係 ― 89.6%
 神とのよい関係 ― 86%
 何でも自由にできること ― 61.7%
 経済的な安定 ― 57.5%
 豊富な職歴 ― 47.1%
 財産を作りたいとの願い ― 43.4%
 富・健康を手に入れたいとの願い ― 32.3%

 さて、あなたは何をもって成功した人生だと考えますか。
 究極の「人生の戦略」は、黄金律を実行することです。

この章のポイント

1. 黄金律とは、「自分にして欲しいことを、相手にもする」ことである。
2. 人間関係においては、相手に与えた通りに自分に返ってくる。
3. 黄金律こそ、究極の「人生の戦略」である。