あなたは幼子と乳飲み子たちの口によって、力を打ち建てられました。

紀元前10世紀頃のイスラエル

ダビデ王

私たちの主、主よ。あなたの御名は全地にわたり、なんと力強いことでしょう。あなたのご威光は天でたたえられています。あなたは幼子と乳飲み子たちの口によって、力を打ち建てられました。それは、あなたに敵対する者のため、敵と復讐する者とをしずめるためでした。(詩篇8:1〜2)

shepherds旧約聖書の中の巻、詩篇は、今でいうと賛美歌集です。その多くはダビデの作であり、この第8篇もそうです。ダビデはイスラエルの王ですが、生まれは貧しい羊飼いの家です。羊飼いの生活は、牧草と水場を求めながら、羊の群れを連れて荒野を移動する生活です。野の獣から羊を守るという危険な仕事でもあります。そのために杖の扱いや石投げの訓練も重ねます。そんな生活の中、ダビデ少年の楽しみは、立琴でした。夜は羊の番をしながら、満天の星空のもと、立琴を弾きながら神様をほめ歌っていたことでしょう。

この詩篇第8篇は、そういう羊飼いの経験の中から生まれた詩です。町ではなく、荒野に自分ひとりで立つことを想像してください。見渡す限りの荒涼とした大地、聞こえるのは渡る風の音のみ。雲の間から太陽の金色の光が地に射しています。水と草はどこかに備えられています。いのちに係わるもので、人間が自分の力で作りだすことのできるものは何ひとつありません。

大自然の声なき声が聞こえてきます。この天地万物をお造りになった神がおられる、と。ダビデは歌います。「私たちの主、主よ。あなたの御名は全地にわたり、なんと力強いことでしょう。あなたのご威光は天でたたえられています」。次にダビデは、不思議な詩を歌います。「あなたは幼子と乳飲み子たちの口によって、力を打ち建てられました」。

「力を打ち建てる」とは、国で言えば統治体制の確立、人間関係で言えば主導権を掌握する、といったことでしょう。そうであれば、普通は、「精鋭の戦士たちの腕によって」とか、「知恵者の頭脳によって」というところです。ところが、最も力のない者である「幼子と乳飲み子」、そして腕などと違ってこれもまた力のない「口」によるとは、どういうことでしょうか? 

新約聖書の中、イエス・キリストの言行録である福音書を読むと、この箇所はイエス・キリストに関する預言になっていたとわかります。イエスが十字架にかかられる最後の週、エルサレムに入城し神殿に行かれたとき、そこにいた子どもたちが「今私たちをお救いください、ダビデの子よ」と言って叫びました。イエスに敵対していた祭司長、律法学者たちはこれを見て腹を立てましたが、イエスは「『幼子と乳飲み子たちの口に賛美を用意された』とあるのを、あなたがたは読まなかったのか」と言われたのです(マタイ21:15〜16)。
詩篇にはこれ以外にも預言が多く含まれています。その箇所だけでは意味がよくわからなくても、新約聖書に引用されたり、あるいはその通りに実現していて、その意味が明確になることがあります。それを発見することも詩篇を読む楽しみのひとつです。

清水 誠一

この記事の執筆者

清水 誠一

熊本聖書フォーラム代表

清水 誠一

1955年生まれ。静岡県出身。
1981年熊本大院卒。
税理士事務所、日本IBMに勤務ののち、1995年より熊本市に在住、現職は会社役員。
20代で右翼思想から転向して、米国バプテスト教会宣教師より受洗。
30代でペンテコステ系神学に傾倒するも挫折、ガン病棟を経験。
40代は仕事に没頭、家庭崩壊と離婚の危機。
50代で聖書を読み直す。
2013年より熊本聖書フォーラム開始、現在に至る。
2014年7月ハーベスト聖書塾卒。

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